ランニングをしていると、以前より息が上がりにくくなったり、同じペースでも楽に走れるようになったりすることがあります。
こうした持久力に関係する指標の一つが、VO₂max(最大酸素摂取量)です。
スマートウォッチにも表示されるため、数値を気にしている人も多いのではないでしょうか。
では、VO₂maxを上げるには、どのようなトレーニングが効果的なのでしょうか。
研究で分かっていることを整理しながら、運動初心者からランニング経験者まで、実践しやすい方法を紹介します。
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VO₂max(最大酸素摂取量)とは?
VO₂maxは、強い運動をしているときに、身体が1分間に取り込み、利用できる酸素量の最大値を表す指標です。
一般的には、体重1kg当たりの酸素摂取量として、mL/kg/分という単位で表示されます。
身体を動かすにはエネルギーが必要です。長時間の運動では、酸素を使ってエネルギーを生み出す仕組みが重要な役割を担います。
そのため、VO₂maxは持久的な運動能力を評価する代表的な指標として使われています。
VO₂maxが高ければ、マラソンも速い?
VO₂maxが高いことは、持久的な運動にとって有利な要素の一つです。
しかし、VO₂maxだけでマラソンの記録が決まるわけではありません。
例えば、同じVO₂maxでも、一定の速度で走るために必要なエネルギーが少ない人の方が、効率よく走れる場合があります。
この効率を表すのが「ランニングエコノミー」です。
また、速いペースをどの程度持続できるかには、乳酸性作業閾値などの指標も関係します。
つまり、VO₂maxが上がることと、マラソンのタイムが短縮することは、必ずしも同じではありません。
筋力やランニングエコノミーについては、関連記事「マラソンに筋トレは必要?」でも解説しています。
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VO₂maxを高める3つのトレーニング方法
1. 無理なく続けられる有酸素運動
まず取り入れたいのは、ウォーキング、ジョギング、自転車などの継続的な運動です。
目安は、呼吸が少し速くなっても、会話ができる程度の強度です。
例えば、20〜30分の早歩きや軽いジョギングから始めます。慣れてきたら、運動時間や頻度を少しずつ増やします。
重要なのは、毎回限界まで頑張ることではありません。
普段の生活に取り入れやすい強度で運動することで、継続的に身体へ刺激を与えられます。
運動経験が少ない人は、この方法を中心に考えるとよいでしょう。
2. ややきついペースを維持する運動
運動習慣ができてきたら、普段より少し速いペースで一定時間動く方法もあります。
ランニングでは、テンポ走などがこれに当たります。
例えば、十分なウォームアップの後、ややきついと感じるペースで10〜15分程度走り、その後ゆっくり走って終了します。
ただし、テンポ走は本来、目的に応じて運動強度を設定するトレーニングです。
単純に速く走ればよいわけではなく、現在の走力や疲労の状態に合わせた調整が必要です。
3. 高強度インターバルトレーニング(HIIT)
HIITは、強度の高い運動と回復時間を交互に繰り返す方法です。
例えば、ランニング経験がある人なら、次のような組み合わせが考えられます。
- ゆっくり走ってウォームアップ
- やや強い〜強い強度で2〜3分走る
- 2〜3分ゆっくり歩く、または走る
- この組み合わせを3〜4回繰り返す
- 最後にクールダウン
これは取り入れ方の一例であり、すべての人にとって最適な運動時間や回数という意味ではありません。
特に、普段運動していない人が突然取り入れる必要はありません。
強い運動には相応の疲労が伴うため、十分な運動経験と回復時間を確保することが大切です。
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研究では、どのくらい効果が確認されている?
低強度でも高強度でも、改善の可能性がある
2022年に公表された総説では、11件のシステマティックレビューが検討され、重複を含む対象資料として179件の一次研究が報告されています。
これらのレビューでは、さまざまな運動強度のトレーニングによってVO₂maxの改善が確認されました。
高強度トレーニングの方が有利という結果もありましたが、その差は小さい、ほとんどない、あるいは明確ではない場合もありました。
また、効果には運動強度だけでなく、運動時間、トレーニング量、継続期間、参加者の体力などが関係していました。
この結果からも、VO₂maxを高める方法を一つに限定することは適切ではありません。
競技者ではHIITの効果も期待できる
2026年に公表されたシステマティックレビューでは、トレーニング経験のある競技者を対象とした61研究が収載され、そのうち60研究が主要なメタ分析に用いられました。
その結果、普段の競技練習にHIITなどを追加すると、VO₂maxが改善する可能性が示されました。
ただし、研究全体のエビデンスの確実性は低い、または非常に低いと評価されています。
また、この研究はトレーニング経験のある競技者が対象です。
その結果をそのまま初心者に当てはめたり、特定のインターバル方法が全員に最適だと判断したりすることはできません。
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週何回、どのくらい運動すればいい?
WHOの身体活動ガイドラインでは、成人の健康づくりのために、週150〜300分の中強度の有酸素運動、または週75〜150分の高強度の有酸素運動などが推奨されています。
これは健康全般を目的としたガイドラインであり、VO₂maxを最大限高めるための専用プログラムではありません。
運動を始めるときは、まず現在の体力に合わせて少ない量から取り組み、徐々に増やしていきましょう。
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VO₂maxの数値はどうやって測る?
正確な評価には呼気ガス分析が必要
VO₂maxを直接評価する代表的な方法は、トレッドミルや自転車エルゴメーターを使って運動負荷を段階的に高め、呼気中の酸素や二酸化炭素を分析する検査です。
一方、スマートウォッチでは、心拍数、運動速度などの情報からVO₂maxを推定する機能が使われています。
両者は同じものではありません。
スマートウォッチの数値は参考になる?
2022年のシステマティックレビューでは、14件のウェアラブル端末の検証研究が分析されました。
運動中のデータを使う推定方式は比較的精度が高い傾向にありましたが、個人単位では誤差が大きくなる場合もありました。
そのため、ウォッチに表示されたVO₂maxが1〜2ポイント上下しただけで、体力が確実に改善した、または低下したと判断するのは適切ではありません。
同じ機器を使い、ある程度長い期間の変化を確認する方が実用的です。
ただし、継続的に記録しても、推定誤差そのものがなくなるわけではありません。
実際のランニングペースや心拍数、主観的なきつさも合わせて確認しましょう。
また、VO₂maxを体重当たりの数値で評価する場合、体重が変わるだけでも表示値に影響が出ます。
体重当たりのVO₂maxを上げるために、無理な減量を行う必要はありません。
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低酸素トレーニングでもVO₂maxは上がる?
低酸素環境での運動と、通常環境での運動では、身体が受ける刺激が異なります。
そのため、低酸素環境でのトレーニングがVO₂maxに及ぼす影響も研究されています。
2025年に公表された、過体重または肥満の人を対象とした19件のランダム化比較試験・523人のメタ分析では、通常環境での運動と比較して、低酸素環境での運動にVO₂maxの追加的な改善が認められました。
一方、対象者やトレーニング期間、運動強度、酸素濃度などによって結果は異なります。
この結果だけで、健康なランナーや一般の利用者にも、低酸素トレーニングの方が必ず効果的だとは言えません。
また、低酸素環境では血中酸素飽和度(SpO₂)が低下することがありますが、SpO₂が大きく下がればVO₂maxが大きく改善するという関係が確立されているわけではありません。
通常環境でも継続的な運動によって持久力の改善は期待できるため、まずは基本となるトレーニングを大切にすることが重要です。
低酸素環境での運動については、関連記事「低酸素トレーニングって本当に効果あるの?」でも詳しく解説しています。
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VO₂maxを上げるために、気をつけたいこと
高い運動強度に挑戦することより、継続的にトレーニングできる状態をつくることが重要です。
十分な睡眠や栄養、休養を確保し、疲労が強い日は運動強度を下げるなど、身体の状態に合わせて調整しましょう。
胸の痛み、強い息切れ、めまいなどが現れた場合は運動を中止し、必要な医療評価を受けてください。
心臓や呼吸器の病気がある人、運動を制限されている人、長期間運動していなかった人は、高強度運動を始める前に医療職へ相談することが重要です。
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まとめ:数値だけでなく、運動の変化を確認しよう
VO₂maxは持久力に関係する重要な指標ですが、その数値だけですべての運動能力が決まるわけではありません。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を継続することが基本となり、運動経験のある人にはインターバルトレーニングも選択肢になります。
ただし、最適な方法は人によって異なります。
数値の改善だけを目標にするのではなく、以前より楽に動けるようになったか、同じペースを長く維持できるかといった変化にも目を向けてみてください。
REFINEでは、現在の運動習慣や目標に合わせたパーソナルトレーニングに加え、常圧低酸素室を利用した運動もご案内しています。
ご自身の体力や目的に合わせ、無理なく継続できる方法を考えていきましょう。
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参考文献
- Crowley E, et al.(2022)The Effect of Exercise Training Intensity on VO₂max in Healthy Adults: An Overview of Systematic Reviews and Meta-Analyses. Translational Sports Medicine.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38655159/
- Milanović Z, et al.(2015)Effectiveness of High-Intensity Interval Training (HIT) and Continuous Endurance Training for VO₂max Improvements: A Systematic Review and Meta-Analysis of Controlled Trials. Sports Medicine.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26243014/
- Li D, et al.(2026)Comparative and dose-response effects of supplementary exercise training on VO₂max in trained athletes: a Systematic Review and Bayesian network meta-analysis. Frontiers in Physiology.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42597392/
- World Health Organization(2020)WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK566046/
- INTERLIVE Network(2022)Validity of Estimating the Maximal Oxygen Consumption by Consumer Wearables: A Systematic Review with Meta-analysis and Expert Statement. Sports Medicine.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35072942/
- Effects of exercise interventions in hypoxic environment on cardiovascular function and maximal power output in obese or overweight individuals: a systematic review and meta-analysis.(2025)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41315922/
※本記事は一般的なトレーニング情報です。個人の健康状態や運動経験によって適切な内容は異なり、VO₂maxの改善や競技成績の向上を保証するものではありません。
